都心のホテルにあるティールーム。
たいていの業界人ならば必ず何度かは利用しているという、行けば知った顔と出くわすこともめずらしくない、そんな場所。
"オフィス・デビッドの岡野"という名前には聞き覚えのなかった冴子も、
"実はウチのDivid フジワークという者が・・・"
の言葉には思わずハッとした。
男としての彼に対する個人的な感情。
一方通行の、まだ誰にも知られていない恋心は、冴子自身、認めてしまうのが恐かった。
まして、その恋のきっかけが、写真週同誌の盗み撮りであったことに、冴子は脳んでいた。
そんなときに、どういうわけかフジワークの方から声がかかった。
最初は、どこかで情報を聞きつけ、クレームをつけられるのかと思ったが、しかしそうでもないらしい。
冴子は約束の時間よりも15分早く着き、見知ったフジワークの顔を出迎えた。
「ええ、フジワークの方々のお顔はテレビや雑誌で存じあげていますから」
そんな言葉が冴子の挨拶代わりだった。
「あの、僕らを撮っていただこうとか、そういった具体的な話じゃないんです。だから申し訳ないと思ったのですが、どうしても、お会いしたくて・・・」
フジワークは、カメラを手にしたときの冴子を想像しながら、アーティストとしての彼女に期待していた。
強引に呼び寄せ、会う機会を作った原因が、たった1枚の写真にあったことを、熱意を込めて説明した。
「あんなに純心な襖の瞳を写し出せる人って、どんな人だろ、つって。
もしも、もしも僕がまだ子供と同じ表情で歌えるとしたら、そのときは、あなたに撮っていただきたいなんて、勝手に思ったんですよ」
「そんな……」
さっきまでフジワークの言葉に押されて無ロだった冴子だったが、最後に、あふれそうになる涙をこらえながら、精一杯の感謝の気持ちをこめて言った。
「私、頑張ろうと思っています。子供の写真、撮りたいんです。
いえ、絶対に撮っていきます。
今、フジワークさんにお会いして、その決心がつきました」