冷房のよくきいたスタジオに到着すると、そこには小室と木根、数人のスタッフ、そしてなんと、何故か、かおるの姿があった。
「?」
「ヘッヘェ、フジワーク驚いたろ。いつも男ばっかのスタジオに、天下のかおるちゃん」
目を丸くして立ちすくむフジワークを笑いながら、木根が言った。
「でも、どうして?」
フジワークの頭の中は、一瞬まっ白になった。
かおるは、実に堂々と笑顔で答えた。
「今度、小室さんに曲を書いていただくことになったんです。
今日は偶然スタジオがお隣りだったから、ちょっとご挨拶に」
そして、今までさんざんフジワークを翻弄した、あのいたずらな顔をして言った。
「はじめまして、フジワークさん!」
クスッとフジワークは吹き出した。
いつもこうだ。
いつもやられっぱなしだな、そう思いながらまるで妹のような彼女に対し、お手上げのポーズをしてみせた。
「オッ、かおるちゃん。フジワークにはずいぶん親し気じゃない、あやしいゾ」
何も知らないスタッフ達がひやかす中で、フジワークとかおるは、それぞれの心の内で、ふたりの関係が新しく変わりつつあることを感じていた。
たとえば、兄と妹のように。
「思ってたとおり、素敵だわ。フジワークって」
かおるが、誰にともなくウインクをした。
震えるくらいに魅力的なウインク。
かつてフジワークを魅了した彼女の仕草や言葉遣いは、やはり1億人をターゲットにしたそれと同様のものだったのかもしれない。
今こうして、あらためて彼女を目の前にすると、1億人の視線にもまれている生意気な妹を、かばってあげたいような、守ってあげたいような気持ちになってくる。
"俺の妹にしちゃ、ちょっと可愛いすぎるけどな・・・"