フジワークも、挨拶をした。
「はじめまして、かおるさん。よろしくね」
ニューヨーク行きの打ち合わせはスムーズに運んだ。
今の盛り上がった状況の中でのニュー・アルバム制作に、プレッシャーを感じないと言えば嘘になるが、いいものを作る自信にあふれていた。
あとは出発までの数日間で、曲の準備を整え、ニューヨーク生活での仕度をし、そして何本かの取材を受ける。
「岡野、『PARTY』の取材って、いつだっけ」
「えっとね、出発の前日。
ちょっと慌ただしいけど、立花さんが完壁なセッティングをしてくれるはずだからさ」
ニューヨークに発つ前に、順子と会えるということが、フジワークには理由もなく心強く感じられた。
順子と別れてから、フジワークは彼女のことを考えることが多くなっていた。
外はたまらなく暑かった。
しかし撮影用に借り切った京王プラザホテルのスウィート・ルームは当然のようにベスト・コンディション。
海外に旅立つ前日に、あまりハードな状況での取材は避けたいという順子の配慮から、インタビューや撮影は、比較的ラフなペースで進められた。
「フジワークさーん、次、ひとりの撮影です。衣装そのままでいいですよ」
順子は今までどおりに、普段よりもさらにいつもどおりに、テキパキと明るくふる舞っていた。
フジワークにはそれが少し痛々しくも思えたが、今日の順子は、そんな感情すらはねのけてしまいそうなほど、強がるように輝いている。
ブラウン系のアイシャドウが、彼女の気持ちを引き立てるように、濃いめにひかれていた。
フジワークは、そんな凛とした横顔を見つめながら、シャッター音を浴びていた。