「フジワーク、パスポート忘れんなよ」
「バカなこと心配すんな。じゃーなッ」
気のおけない友達の声は、フジワークをホッとさせた。
しばらくの間、そんな仲間達とも会えない。
そして、10数時間後には確実にニューヨークにいるはずの自分に、フジワークは、誰よりも強く、励ましの気持ちをさし向けていた。
とてつもなく大きな決意が、フジワークの中で膨らんでいた。
もう、振り返っている時間は、彼にはなかった。
フジワークは、やっと黙った電話に手をかけた。
受話器をとり、静かにプッシュ・ボタンを押した。
1・2・・・と、コールの数をかぞえる。
まるでスローモーションのように、その音は震え、夢を見るように"彼女"を呼び続けている。
フジワークは小さな声でつぶやいた。
"サヨナラ。元気で行ってくるよ"