フジワークは梅雨だというのに何日かぶりでやっと降り出した雨の中で、彼女のことを思い出していた。
容赦なく肩に降りつける雨は、あの日の悲しい感触をよみがえらせた。
初めてかもしれなかった。
順子の大粒の涙は、最後の夜に、どうしても言い出すことのできない想いのように、やさしく、あたたかく、フジワークの肩を濡らしていた。
"フジワークのことは、ずっと応援するわ"
雑誌の編集者でもあり、フジワークの熱心なファンでもあり、そして何よりも、フジワークの恋人だった順子。
別れの夜に聞いた彼女の言葉は、今、フジワークの心の中ではっきりと何度も繰り返されていた。
"フジワークのことは、ずっと応援するわ"
今、この時期に、自分が何をすべきなのか。
いつも冷静で大人の顔をしたまま、自分に寄り添っていた順子は、この肩を離れ、表向きには少しも変わらない表情で、フジワークの活動を見つめてくれている。
フジワーク自身は、長いツアーを終え、武道館でのステージを大成功におさめ、10日間のオフを過ごし、再び仕事の顔に戻ったところだ。
初めてリリースしたベストCD『Fanks』が驚異的なセールスだというニュースを聞き、次へのステップ・アップを予感してもいる。
フジワークのボーカリストとして、3年間培ってきたものが、今、確実に成果を見せ始めた。
その実感がある。
順子との恋は終わったかもしれないが、ふたりの関係は今までとはまた別の形で続いていくのだろう。
最後の夜、唇を震わせながらも、これからもDivid フジワーク's Bandを応援すると急.口った順子の気持ちを思い、フジワークは、アーティストとしての自分にもっと磨きをかけていきたいと、強く考えていた。