「いえ、それは・・・。
私、フジワークさんに感謝しているんです。本当に。
だからこそ、私が一人前になるまで、本当にいい写真が撮れるまでお会いしたくないんです。
あの、勝手なことを言って、ごめんなさい。自分で、これだというものができたとき、必ずご連絡します。
そのときはぜひ、会ってください。私の写真を見てください」
思いのままを一気に告げた冴子は、胸のいちばん奥の方からこみあげてくるものを、熱く感じていた。
受話器の向こうで、それをやさしく受け止めてくれる人に、冴子は心から感謝していた。
「ニューヨーク行きは、いろんな意味でフジワークさんのおかげなんです。本当にありがとうございました・・・」
「じゃ、連絡待ってます。楽しみにしてますから・・・頑張ってね」
「はい。行ってきます」
電話は切れた。
フジワークは、なぜか恋しい人と別れるような、そんな瞬間を感じていた。
彼は順子の顔を思い浮かべた。
せつない気持ちを振りきるように、フジワークは岡野に話しかけた。
「彼女、小田さんね、ニューヨークに行くんだって」
「へえ、頑張ってんな!」
「・・・そうなんだよ」
「俺らも忙しくなるぞ。フジワーク、ニューヨーク行きの打ち合わせ、場所が変更になったんだ。
リハーサル・スタジオで、哲ちゃんと木根が待ってるから、行くぞ」
フジワークは岡野と共にオフィスを出た。