順子との別れをとりたてて話すことなど、フジワークには何もなかった。
今日、小学校の脇で遅咲きの桜を見たことも、テンションの上がりきったマサシには、うまく伝えることができそうもなかった。
マサシが、数秒間の沈黙をさえぎった。
「オマエと話してると暗くなるぜ。疲れてんじゃないの?オレに気イ遣うなよ。無理すんなよな。
そのスチュワーデスさ、マリっていうんだけど、ホント言うとさ、もうダメみたいなんだ。
ま、最初っから相手にされてないっていうか」
フジワークは、マサシと飲むときは決まって行く店の名と、時間を告げて、電話を切った。
冷蔵庫からビールを取り出し、テレビをつける。
ゴールデン・ウィークに公開される映画のダイジェストをやっていた。
フジワークのツアー中は身動きのとれない日々が続き、その不自由さが、フジワークを10本の映画にかりさせたが、結局、そのどれも見ることができなかった。
ツアーも終わり、時間の余裕を感じた今、フジワークの興味は、どの映画にも向かわなかった。
"疲れがたまったのかな"
目を閉じると、まだあの巨大なホールに集まった人々の歓声が聞こえてくるようだった。
少女たちが叫ぶ声。拍手。虹のようなスターライト。その中で、歌い踊る自分・・・。