深夜にオンエアされるテレビ番組だからといって、必ずしも陽が沈んでからの時間に収録があるとは限らない。
シズカが進行役をつとめる音楽情報番組『ミュージック・ヴィジョン』にしてもそうだった。
ゆうべ、マネージャーの立野から、午前10時にはテレビ局入りするように伝えられ、フジワークは"ずいぶん早いな"と思った。
そして、先月偶然に知りあったシズカのことを考えた。
印象的だった赤いワンピースのことや、激とした雰囲気と同時に、男と女をじゅうぶんに意識させるその微笑みと視線など、彼女のことをいろいろと、何故だか考えていた。
夜更しの原因がまさかそれだけとは思えないが、とにかく朝方まで眠れずに過ごし、そして不覚にも寝坊してしまった。
電話のベルが鳴る。
うつつの中で、一瞬、それまで見ていたと思われる夢の真新しい記憶と現実が激しくミックスされた。
誰か、女の影がチラつき、そして急激に、立ち去っていく。
順子なのかシズカなのか、それとも……。
夢を回想しようとして伸ばした手が無意識に受話器をとった。
「おーいフジワーク、たのむよォ、まだいたの。10分で出て。すぐタクシーひろって。
オレ、ロビーで待ってっから。すぐだぞ、すぐ!」
立野だった。
フジワークはあわてて仕度をした。