スタジオ入りしたとき、まず最初にフジワークを出迎えたのは、キャスターであるシズカの笑顔だった。
鮮やかなブルーのワンピースを身につけた彼女と、そして全体的にグレーの印象を持ったディレクターとが同時に近寄ってきて、彼女のほうが明るく手を差し出し、握手を求めてきた。
「お待ちしてました。どうぞよろしく」
ディレクターは、台本を差し出し、フジワークの出番を確認しながら、遠慮深く探る視線でフジワークとシズカを交互に見た。
「えーとフジワークさん、ウチの織田とは-…」
初対面なのかどうかを気にしているようだった。
「あっ、紹介はもう必要ありませんよ。ね、フジワークさん」
質問に答えたのは彼女のほうだった。
その後約1時間、打ち合わせもそこそこに始められた収録は、そのようにすべてがシズカのペースで進められたが、しかしそれはフジワークにとって結構心地良いものでもあった。
「オツカレー」
ディレクターに挨拶を済ませた立野が近寄ってきて、フジワークの隣りにいるシズカにも軽く頭を下げた。
「フジワーク、オレ駐車場からクルマ出してくるから、正面玄関で待ってて」
「何分ぐらいかかる?」
「ん、じゃ10分後に」
「OK」