「フジワークさん、今度デートしてください。
もちろん断ってくれてもかまわないけど、それならそれで、ちゃんとお返事をくれなくちゃ困りますからね」
そしてシズカは素早い動作でフジワークの袖ロをまくり、ひじの裏側あたりになんとテレフォン・ナンバーを書いてしまった。
「水性ペンだから気をつけてくださいね。これが消えないうちに電話をするように」
半ば呆気にとられながらフジワークは、彼女のなすがままに今度は袖のボタンをとめてもらった。
強引に作られた小さな秘密が、シャツに隠された腕でシクシクとうずく。
そんな行動と初々しい仕草を同時に行ってしまうシズカは、おそろしいほどに女なのだった。
その夜フジワークは久々に親友マサシと会い、彼の誕生日を祝った。
フジワークはジンのロック、マサシはチューハイ。
ふたりの酒の好みを満たし、それでいてくつろげるそんな便利な場所は結局フジワークの部屋だけだった。
寿司の出前をとり、ピザを配達してもらった。
「女はいないの?女は!」
酒がすすむに連れてそんなことを日走りながらも、マサシは満足しているようだ。
男ふたり、ときに寝ころがりながら飲む酒は、どこか学生時代を思わせる、気のおけないものだった。
「マサシ、ほら、この間話してたスチュワーデス。その後どうなった?」
「そのあとも何も。初めから何もないようなもんだもん」