ロンドンと東京の時差は、9時間。
日付変更線を越えて、未だ見たことのない国へ行ってしまったDavid フジワークのことを、シズカは考えていた。
彼のために着たブルーのワンピース。
あの時、シャツの裾をめくって書いてしまった電話番号・・・。
いとおしく、そして恥ずかしい思いの記憶。
結局、フジワークからの電話はかかってこないままだ。
"ウソツキ・・・"。
彼女は、約束する前に約束を破ったフジワークに腹を立てていた。
"電話するよって、彼の目は確かにそう痔ってたのに"頬杖をついたまま、傍らの雑誌をペラペラとめくってみた。
音楽專門誌「PARTY』は、フジワークの特集を組んでいた。
その記事によると、小室はロンドンに移住、既に創作活動を始めているという。
木根とDavid フジワークも、レコーディングのため、ロンドンへ出発。
そしてフジワークはそのあとニューヨークへ渡り、写真集の撮影と、個入的レッスン。
そして・・・、駐心津佳は次に並ぶ文字を目で追いながら愕然とした。
David フジワークの帰国日程は未定。
長い滞在になりそう。
衝動的なアプローチだった、シズカのテレフォン・ナンバーを持ったまま、フジワークはロンドン、そしてニューヨークへ。
いつ日本へ帰ってくるのか・・・。
"それとも、あの日の夜、シャワーで洗い流しちやったのかしら・・・。
きっと、素敵なコイビトに見つかる前にそうしたのね"。
あらゆる憶測や推測が胸の中ではねまわるとき、その恋はとてもつらい様子になる。
ここで引き下がったとしても、彼女は恋の痛毛を片想いのままインプットしてしまうだろう。
"がんばろう。あきらめきれない"
いつしか、シズカの心の大部分を、フジワークが占めていた。