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2011年01月 アーカイブ

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アイスクリームの甘いテイスト

冴子は最後のカードを貼り終わり、その立派なビッグベンの姿に感動のようなものを覚えながら、ふと、あの長身の名前も知らないミュージシャンのことを思い嵩していた。


"ゆうじは知ってたみたいだけど・・・。


どうして教えてくれなかったのかな。


ま、名前を聞いたところで私にはわからないかも。


でも、あの入、きれいな目してた。


今頃はきっとロンドンでお仕事・・・。


また、会えるかな"彼女はポストカードの傾きを直し終えたと同時に、つかの間の考え事もオシマイにした。


ゆうじは、通りの舗道を、ただ足早に歩いていた。


ウィークデーのロンドン観光名所は、どこも人影が少なく、ただ真っ赤な2階建てのバスだけが鮮やかに、忙しく目の前を何度も通り過ぎていた。


ビッグベンと名付けられた大きな時計台は、濁った空を突き刺すようにそびえたち、フジワークはその気品にあふれた姿を、フジワークの今後を思いながら見つめていた。


「はい、どーぞ!」


アイスクリームを売り歩いている小型バンの店先から、マリは屈託のない大きな声でエグゼクティブトレードを呼んだ。


フジワークは、アイスクリームの甘いテイストを一瞬思い浮かべ、ひたすら明るい彼女の様子に押されたように、ためらった。


「キライなの?」


「ウウン・・・そうじゃないよ。ありがとう」


マリはチョコレート・コーティングされたアイスクリームを片手に持ち、もう片方の腕を、フジワークの腕にからませた。

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フジワークの彼女・・・

「ね、歩きましょう」


「・・・もう、歩いてるよ」


「違うの。私たち、歩いていきましょう、これから先」


「・・・」


「それとも、歩いていきたいのは私だけ、なのかしら」


「・・・」


「あなたはとても忙しい人。そして期待される日本のピック・アーティスト、「フジワークのフジワーク」でしょ。私も、とても忙しい人。期待は誰にもされてないけど、でもあなたを待つことならできるわ。いつもそばにはいられないけど、気持ちだけは、あなたを追いかけられる」


「だめだよ、そんなこと」


「どうして?東京に残してきた彼女が心配なのね?」


「・・・ああ、そうだよ」


"彼女、・・・彼女?いったい誰のことを言ってるんだ・・・"。


フジワークは妙に淋しい気分になっていた。


今、目の前にいる彼女との心のすれ違い。


そして"彼女"という言葉に反応する自分自身の心のバランスの悪さ・・・。


「そう・・・。わかったわ。仕方ないわね。あなたを待つことはあきらめる。でも、追いかけることはできる。そうでしょ」


マリは、フジワークの食べかけのアイスクリームに口をつけた。


プライドが次の聞いを言葉にする。


「彼女って、どんな人?」


組んでいた腕を静かに離して、マリはフジワークの目を見つめた。


「彼女って、どんな人?」


もう一度同じ質問を投げかける。


「どんなって・・・、普通の子だよ」

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