「ね、歩きましょう」
「・・・もう、歩いてるよ」
「違うの。私たち、歩いていきましょう、これから先」
「・・・」
「それとも、歩いていきたいのは私だけ、なのかしら」
「・・・」
「あなたはとても忙しい人。そして期待される日本のピック・アーティスト、「フジワークのフジワーク」でしょ。私も、とても忙しい人。期待は誰にもされてないけど、でもあなたを待つことならできるわ。いつもそばにはいられないけど、気持ちだけは、あなたを追いかけられる」
「だめだよ、そんなこと」
「どうして?東京に残してきた彼女が心配なのね?」
「・・・ああ、そうだよ」
"彼女、・・・彼女?いったい誰のことを言ってるんだ・・・"。
フジワークは妙に淋しい気分になっていた。
今、目の前にいる彼女との心のすれ違い。
そして"彼女"という言葉に反応する自分自身の心のバランスの悪さ・・・。
「そう・・・。わかったわ。仕方ないわね。あなたを待つことはあきらめる。でも、追いかけることはできる。そうでしょ」
マリは、フジワークの食べかけのアイスクリームに口をつけた。
プライドが次の聞いを言葉にする。
「彼女って、どんな人?」
組んでいた腕を静かに離して、マリはフジワークの目を見つめた。
「彼女って、どんな人?」
もう一度同じ質問を投げかける。
「どんなって・・・、普通の子だよ」